2023年2月14日
寝食忘れて読むあまり、骨にならぬようご注意ください。小学館文庫『骨を弔う』 | |
要注目作家が放つ、記憶を震わすミステリー! | |
30年前のあの日、 本当は何を埋めたんだろう。 | |
![]() 「堤防から人骨!?」という見出しが飛び込んできた。 地元紙に報じられた“バラバラ事件”――。 ‹‹18日、 市内赤根川の堤防(替出町)の土中から、 人骨が露出しているとの通報があった。 前日の川の増水で堤防の土がかなりの範囲抉(えぐ)られており、 土の中から人骨のようなものが散乱しているのが見つかったもので、 警察の調べでは、 理科の教材や医療機関の見本などに用いられる骨格標本であることがわかった。 埋められて数十年は経っているというが、 誰がなぜこんな場所に埋めたかは不明。 とんだ人騒がせな“バラバラ事件”に、 警察も首をひねっている。 ›› そのトピック記事を見つけた家具職人の豊は数十年前の小学生時代、 同級生5人で山中に骨格標本を埋めたことを思い出す。 しかし、 それは記事の発掘場所とは明らかに異なっていた。 同時に、 ある確かな手触りから「あれは本当に標本だったのか」との思いを抱いた豊は、 今は都内で広告代理店に勤務する哲平に会いに行く。 最初は訝しがっていた哲平も、 ふと、 記憶の底に淀んでいたあることを口にする。 リーダー的存在だった骨格標本埋葬の発案者・真実子があの日、 唱えた「骨を弔う詩」にはどんな思いが込められていたのか・・・? ‹‹口を閉じ、 目をつぶれ。 耳に土くれを詰め込め。 もうお前には、 声高に自己を主張する権利もない。 他者を損なう力もない――。 ›› 子ども時代の「出来心=冒険」の意味を大人になって知る。 今、 もやもやとした毎日を過ごしている彼らの心に、 掘り起こした「記憶」が訴えかけるものとは・・・? 30年前、 小学生だった男女5人の記憶が、 そして人生が、 震え始める。 あの日埋めたのは骨格標本ではなく人骨!? ぐっと引き込まれる戦慄のイントロ。 各章に綴られた同級生ひとりひとりの濃厚な人間ドラマ。 そして、 思いもよらないラストの仕掛け! 凄みと痛みと慈しみと、 ほんの少しの遊び心を携えた、 これぞエンターテインメント!! 解説は 「本書が宇佐美まこと作品の中で、 最大の問題作」 という書評家の北上次郎氏。
1957年愛媛県生まれ。 2006年に『るんびにの子供』で第1回「幽」怪談文学賞短編部門を受賞しデビュー。 2017年、 『愚者の毒』で第70回日本推理作家協会賞長編部門および連作短編集部門受賞。 2019年『展望塔のラプンツェル』が「本の雑誌ベスト10」第1位に選出される。 | |
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