「YOLO」「小確幸」「マイルドヤンキー」アジアに見られるミレニアル世代の価値観、その先にある“独立”出版・書店ブーム |
“Y世代”や“デジタル・ネイティブ”ともいわれ、新しい価値観を有す若い世代。平成“後”を牽引する彼らとは。 |
東アジアのカルチャーシーンでは、 “インディペンデント”ブームがいま同時多発的に起こっている。 本屋や出版という切り口から迫った新刊書籍、 『本の未来を探す旅 台北』が株式会社朝日出版社より刊行されました。 |
アジアの中でも経済成長を早くに遂げた国々の間では、 近年、 さまざまな価値観が広まっています。
![]() たとえば2017年の韓国では「YOLO(ヨロ)」というライフスタイルが、 若い世代を中心にトレンドになっていました。 「 Y ou O nly L ive O nce.」の頭文字をとったもので、 「人生は一度きり、 今を楽しく生きよう」という考え方です。 私たちに明日はないけれど、 現在はある カナダのラッパーDrakeが歌詞に綴り、 アメリカから世界中の若者に広がった「YOLO」は、 競争社会や受験戦争というイメージが強い韓国でも近年取り入れられるようになりました。 一時は「YOLO族」という人たちも増え、 音楽番組発のアイドルグループ『少年24』の曲名でも「YOLO!」というタイトルの曲が発表されるなど、 「未来ではなく、 今のために生きよう」という考え方が一般的になっています。 日本と同水準の物価の高さ、 都市部の高賃料問題や学歴社会が若者を取りまく台湾でも、 数年前から「小確幸」が大流行し、 今では日常語として使われています。 会社勤めやマイホームが幸せとは限らない 「小確幸」とは、 村上春樹氏がエッセイ内で使い始めた造語で 、 「 小さいけれど、 確かな幸せ 」という意。 マイホームや高級車など昔ながらの大きな成功ではなく、 「日常に溢れている確実な小さな幸せを積み重ねていこう」というライフスタイルは、 台湾の若者の価値観にマッチし、 本のタイトルや商品のキャッチコピー、 店名や看板など、 いたる所で「小確幸」という言葉が使用されるほどまでのブームに。 若い世代が次々と本屋を立ち上げたり、 出版社をおこす そういったライフスタイルが若いミレニアル世代(1980-2000年代に生まれた人)を通じて具現化した現象として、 ここ最近ソウルや台北などアジアの都市では“独立”ブームが沸き起こっています。 「書店やカフェを開いたり、 本や音楽を作ったりと、 自分の手で何か表現ができて満足できるのなら、 企業でバリバリ働いて稼がなくてもいい。 物質的な満足よりも個人の自主性や自己表現を追求していく。 これが今の若い世代の傾向だと見ています。 だからこんなにもたくさんの人が本屋を始めるんでしょう」ー『新活水』編集長・ティエズー・チャン(本書より)
![]() 朋丁(ポンディン) ――― スーパーミニサイズな美術館
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![]() そしてミレニアル世代が立ち上げた、 「書店」や「出版社」はギャラリーやカフェやコンセプトストアや、 ひいてはメディアとしての役割も兼ねており、 複合的で多様性に富んだ新しい形態のお店であることが多いのです。 これらのお店はカルチャーの担い手として、 独自の流行や文化をその国・都市の若者に発信しています。 『本の未来を探す旅 台北』では、 台湾の独立書店や独立出版を牽引する、 さまざまな新世代に行なった取材インタビューが収録されています。 平成が間もなく終わりを告げようとしていますが、 これからの時代を牽引する“ミレニアル世代”の多様な価値観やライフスタイルの端緒を、 今我々の知らないアジアのいたるところで起きている”インディペンデント”ブームに見出すことができるのかもしれません。 (※写真は全て本書より。 写真=山本佳代子)
![]() (内沼晋太郎/綾女欣伸=編著 山本佳代子=写真) 定価:2,300円+税 内沼晋太郎(うちぬま・しんたろう) 1980年生まれ。 ブック・コーディネーター、 クリエイティブ・ディレクター。 NUMABOOKS代表、 下北沢「本屋B&B」共同経営者。 著書に『これからの本屋読本』(NHK出版)、 『本の逆襲』(朝日出版社)など。 綾女欣伸(あやめ・よしのぶ) 1977年生まれ。 朝日出版社で編集職。 共編著に『本の未来を探す旅 ソウル』、 編集に内沼晋太郎『本の逆襲』ほか〈アイデアインク〉、 武田砂鉄『紋切型社会』、 九螺ささら『神様の住所』など。 山本佳代子(やまもと・かよこ) フォトグラファー。 参加写真集に『Tokyo Halloween』。 主な仕事はミュージシャンのCDジャケットやプロフィール写真など。 http://www.kayokoyamamoto.com/ |